ということで、NX650編を書いてみることにする。

このモーターサイクルは、たしか、一度も国内販売はされなかったと思う。初代のRD02型と、2代目のRD08型がある。RD02は、1988-1994の販売で、国産。RD08は、1995-2000の販売でイタリア産となった。RD02とRD08で大きな違いはない。カウルの形状とタンク容量が違う程度である。モデルがおわるまで、インジェクションにはならなかった。
 私の持っているのは、1988/RD02のUS仕様である。US仕様は、リアブレーキがドラムで、キックスターターなし。排気管から、火の粉が出ないようにラストアレスターがついている、などの違いがある。
 それで、どういうモーターサイクルかというと。

 

DSCF0344直径10cmのピストン
おそらく、ホンダの単気筒としては、最大エンジン排気量のモーターサイクル。
 ピストンの直径は、ちょうど、10cmである。ほぼ軽自動車の排気量のビッグシングルで、馬力は、45馬力。
 こういう乗り味は、なかなか他ではない。
 といっても、シングルなので、回していい気持ちなのは、6000rpm程度が上限で、3000rpm-5000rpmくらいでの巡航である。速度でいうと、だいたい、80km/hあたりが快適速度の上限。もちろん、振動もそれなりにあるので、400km先への舗装路での移動だと、これで移動は、結構、疲れると思う。下は、30002500rpm以下では、ガクガクする。アイドリング時は、木魚を連打しているような音が出る。スロットル・レスポンスのシャープさでは、以前乗っていた加速ポンプ付きのXLR Bajaの方が鋭かった。

計器
 メーターは、ベーシックなもので、速度計、タコメーター、ニュートラル、ハイビーム、左右の方向指示器のインジケーターというミニマムなもの。油温計、電圧計、時計、燃料計などはない。

風防
 標準のスクリーンは、高さが不足しているので、ハイスピードでは、風をもろにうけてしまう。GiviとMRAから、スクリーンが出ているので、交換したほうがいいと思う。私は、Giviのスクリーンに交換した。

ライディング・ポジション
 典型的な前傾ゼロの騎乗スタイル。シート高は、860mmほどあるが、シート幅が狭いので、シート高810mmのK75Sと比べると、K75Sは、シート幅が広いので、同じようなものである。それに、NX650では、またがった時の沈み込みがあるが、K75Sでは、沈み込みは、ほとんどない。沈み込みを考慮しても、まだ、NX650はシートは高いが軽い。K75Sは、シート高は低いが重い。
 私の身長は176だが、NX650では両足でつま先立ちレベル。K75Sはもーすこしましで、両足の指レベルがつく程度か。
 だから、身長や足が短い人は、厚底靴などの対策は必要だろう。NX650のシートは、肝心のところはあんこ抜きできるほどあんこはないので、あんこ抜きの対策が可能化は不明。


始動装置
 RD02には、セルフスターター・オンリーとキック・セルフスターター併用の2つがあるが、私の持っているRD02は、セルフスターター・オンリーのUS仕様。キック併用にアップグレードしたいところだが、エンジンカバーとキックペダルだけで、アップグレード出来るのかは、不明。

航続距離
 航続距離、スクリーン、積載能力は、RD02型の三大欠陥だと思う。RD02の初期タイプは、ガスタンク容量が、13.5L程度しかない。これで、市街地走行ばかりだと、燃費は、16-17km/Lなので、200kmいかずに、リザーブへの切り替えが必要になってしまう。燃費が伸びるツーリング時でも、280km前後で、リザーブへの切り替えが必要になる。ツーリング用途では、この問題は痛い。RD02で、この問題を解決できるのは、アチェルビスの21Lタンク(樹脂製)だけだと思うが、このタンクは、既に製造中止になっていて、中古でしか入手するすべはない。また、日本の車検では、樹脂製タンクは認めていないので、厳密な検査が予想されるなら車検のたびに載せ替えが必要になる。

荷物積載能力
 リアシートの後ろに、見かけは立派なキャリアがついているが、意外と荷物は積みにくい。その最大の原因は、ネットのフックを掛けるステーがないことである。だから、ステーをつくるなど細工が必要。あるいは、Hepco&Beckerから、パニアケースのマウンターが出ているので、これとパニアケースを買う方法もある。ただ、この方法は値段が結構する。シートの下などに、小物を載せる場所もない。そもそも、シートは、開けるようにはなっていない。ETCのアンテナ分離型の設置場所にも、悩むくらいである。

ランニングコスト
 空冷なので、主なところは、オイル、チェーン給油、ブレーキフルード、タイヤ、バッテリー、チェーンくらいだ。オイルは、油温の問題から一般的な10W-30は避けて、Chevronの10W-40か、20W-50を使うことが多い。タイヤは、銘柄にもよるが、リアタイヤは、9000-12000km程度で、交換が必要。フロントは、リアより持つ。前後とも、チューブあり。バッテリーは、モーターサイクル専用サイズで、普通、補水不要なメンテナンスフリーのもの。ただ、この手のバッテリーは、あげやすくて、しかも値段が高い。チェーンは、乗り方にもよると思うが20000km程度はだいたい持つ。

美点
 いろいろ書いたが、これの美点は、軽さと信頼性の高さだと思う。だいたいウェットで、170kg程度。これは、K75Sより、50kg以上軽い。家の近くに、スキー場の上級ゲレンデくらいの勾配のところがあるが、そういうところは、K75Sでは、坂道発進になった場合の大変さを考慮して、避けるが、NX650では、そういうこともない。
 また、メカがシンプルなので、壊れそうな所が少ない。たぶん、乗り手の方が先にくたびれて来るので、乗ろうと思えば、一生モノなんではないかと思う。

結論
 Urban Assault Motorcycle的な使い方がちょうどよい。つまり、都会の短距離主体の利用。しかし、荷物積載量が重要でない場合。積載能力が重要な場合は、スズキ・アクロスあたりの方が、いいかも。